出会い
例のごとく俺は、屋上に居た。
コツン、コツン。足音が聞こえる。
誰だ。普段ここにはあまり人が来ないというのに。
やってきたのは、一人の女子生徒だった。
「あっ、こ、こんにちは」
「こんにちは」
その女子生徒の名前は木ノ下さんと言うらしい。
彼女のほうもここからの眺めをいつも見ていたそうだ。今までよく会わないでいられたな。河野ではないが、この女子生徒は俺でも見とれるような美人だった。
ちなみに、後で知った話だが、彼女は学年どころか学校でも噂になるような、人気女子生徒だったらしい。主に、男子からだ。
しかし、この人気女子生徒がとんでもない女であった事は、俺を含めてまだ、誰も知らない。
この日クラスのムードはものすごくピリピリしていた。なにせ、テストだからな。
しかし、君たち忘れていないか。俺たちは一年。このテストで将来が決まるとは、
まだ思えないな。
それにしても、こうなるとあっという間に夏が来るな…
テストが終わり、放課後となった。
「――ねぇ…おい、永田ーッ」
「うわっ、なんだ、江崎か。なんの用だ」
「あのねぇ、あんたがボケーッとしてるから心配してあげたのよ」
―こいつは 江崎 みゆ(えざき みゆ)俺の幼馴染だ。
小学校のときまでは隣近所に住んでいたのだが、中学に入るときに家の都合で県外に行ってしまった。
そして、最近になってまた戻ってきたようだ。
まぁ俺の心配をしてくれるのだが、うるさくてたまらない。―
「ちょっと聞いてる」
お前といい河野といい何故読者の皆様の邪魔をするんだ。
「ああ、聞いていたさ。それで、何の用だっけ」
「まったく、もういいわ。私もう帰るから」
「おぅ、じゃーなー」
しばし見送る。
そういえば、何故江崎と河野は俺と同じ高校に行くことにしたんだ?
たまたまだろうな…
まぁいい。
「さて、俺も帰るか」